座標と運動量の不確定性

なんかもうすっかりついったらーとたんぶららーになってはてな記法も忘れてしまってますが、ついったでつぶやくにはちょっと長くなりそうなのでこちらで。


量子力学の座標と運動量の不確定性ってあるじゃないですか。これは座標と運動量の演算子の交換関係から導かれますよね。いっぽう場の量子論においては座標は演算子ではなくただの数に引きずり落とされて、座標と運動量の不確定性関係は波束を用いて理解される。したがって量子力学における不確定性関係と場の量子論における不確定性関係はまったく本質的に別のものである。*1


と学部4年生のときに場の量子論の勉強を始めてから20年近くそう思っていました。ところが、量子力学の講義をやることになってノートを作ってたら実は両者はまったく同じものを別の書き方をしているだけである、ということに思い至りました。


すごいスッキリしたのでノートのPDFを置いときます。ノートでは直接は場の理論に言及してませんが*2 1.13節以降をよめば分かる人には分かるはず。たぶん。よく分かんなかったらコメント欄かツイッターでお伝え下さい。

*1:量子力学においても時間はただの数だから、時間とエネルギーの不確定性は波束で理解される。相対論に行くためには座標と時間は同じものでなければならないけれども、場の量子論においては、座標が演算子からただの数に引きずり落とされて時間と同じ扱いになることで、両者が同等になっている。

*2:付録Bで言及しました。v0.25

菅直人の原発事故対応どう思います?

ネットの向こうの皆様お久しぶりです。最近はもぉずっとついったですが、さっきまとめて書こうとしたら140文字づつ書いてくのがめんどそうだったのでこっちで書いてみる。

正月に父方のいとこで奈良に集まって花札奈良大仏前ルゥール)したりしてたのだが、飲み会でのマイ父母(&叔父)による菅直人原発事故対応批判に対して、行きがかり上
「ほぼ最善の対応だった。誰だったらもっとマシだったの?」
と言い張ってみたらもぉこれが総スカンでしてw
「学者はこれだから」
「社会に出たことがないから何もわかってない」
とかなんとか(;^ω^)
ちなみに
「誰だったらもっとマシだったの?」
に対しては元官僚たる父は「誰でも」私「誰だよ」父「村山とか」
ねーよw
阪神大震災みたいに何もしないで役人の神輿に乗っかってりゃいい状況と違って原発事故は放っといたらどんどん事態が悪化してコントルォールできなくなってくとこが違うわけで。
私はネットに接しているので「怒鳴られたから萎縮した」「視察で対応が遅れたせいで深刻化した」とかそういうのは原子力村のプルォパガンダだったことがほぼ明らかになってきたといってよいということを知ってるが、日本の新聞や雑誌なんかの劣ったマスメディアにしか接してないご老人はあれだ、とりあえず両方の意見を読んでみる、という事がなくて、一旦空気によりこっちが悪、と認定されたら一切そっち側の意見が遮断されるのであるな。んで
「そういう原子力ムラのプロパガンダだけじゃなくて反対のも読んでみ?菅直人が自分で書いてるから。まぁ俺も読んでないけど」
と言ってみたが自分が読んでないのはやはり笑いどころにしかならないw
というわけで購入してみた。(まガメさんご推奨なので買おうとは思っていたのだ。)

東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと (幻冬舎新書)

東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと (幻冬舎新書)

まだ読み始めたとこだがけっこうおもしろいよ。オススメ。(たぶん一瞬で読めそう、って読んでからこれ書きゃよかったな。。)

なお結局そのときのヨッパライ談義は「まぁなんとでもお言い。歴史が評価するから。20年後に見てるがよろしい。それまで長生きしてくれ」的に〆。

あーこれぐらいならついったでもよかったな。ま久々にルィハビリということで。(なお文中のカタカナ表記はこちらに準拠。)

論文を出しました。

LHCの最新結果

おひさしぶりです。先月LHCの新しい結果が出ました。ワクワクどきどきです。最新の結果について日本語で読めるのは浅井さんのまとめが分かりやすいです(どちらもPDF):

論文書いたよ!

最近ネットにも出歩かず沈潜して書いてた論文が今日ようやく出ました。ついったで時々でてくるネ申なべさんおくちゃんとの共著です。

読んでね!!


素粒子論グループ会員安全確認ウェブページ

東北関東信越素粒子論グループ記載機関にいらっしゃる方々がご無事であるという情報をご存知の方は、

  • 上のウェブページに直接書きこむ(user/passwordに関しては[sg-l 6306] をご参照下さい)
  • sg-lが読めなくてパスワードも分からない方は sorontogether@gmail.com まで直接連絡

でご連絡頂けないでしょうか。

今後の安否情報の書込・参照はこちらをご利用ください.


1)みなさま、是非、安全が確認された方のお名前
(できればフルネーム)を、書き込んでいただけますでしょうか.
被災状況も書き込んでいただけると助かります.
(日付入りで現況など.)


2)書き込む際、以下の情報が必要です.
ユーザーネーム: ([sg-l 6306] をご参照下さい)
パスワード: ([sg-l 6306] をご参照下さい)


3)書き込み方は簡単です (安否確認のページに
手順が書いてあります)が、書き込みにくい方は、
sorontogether@gmail.com
まで情報をご連絡ください.こちらで書き込みます.


*支援情報等を書き込む欄もありますのでご利用ください.

とのこと。


追記

このような事情により盟友ソンチャンも一緒にもらえることになりました。(書かれているとおり井田っちの貢献も高く評価されているが、彼は単に素粒子論グループのメンバーじゃないので外れている、という事です。)

第5回(2010年度)素粒子メダル奨励賞選考結果報告書(訂正版)


先日、第5回素粒子メダル受賞者を(3件、4名)の方に決定したと報告しました
が、その後尾田欣也氏の共同研究者Seong Chan Park 氏が素粒子論グループ会員
であることが判明しました。そのため、第5回素粒子メダル奨励賞は3件、5名の
方に授与されることになりましたので、改めて報告いたします。


2010年度素粒子メダル奨励賞選考委員会
五十嵐尤二、大野木哲也(副委員長)、東島清(委員長)、福間将文、前川展
祐、山口昌弘


受賞者氏名:


1. 尾田欣也(おだ きんや)、Seong Chan Park
"Rotating black holes at future colliders: Greybody factors for brane fields",
Physical Review D67 (2003) 064025 Erratum Physical Review D69 (2004) 049901.


2. 駒 佳明(こま よしあき)、駒 美保(こま みほ)
"Spin-dependent potentials from lattice QCD",
Nuclear Physics B769 (2007) 79.


3. 衛藤 稔(えとう みのる)
"Static interactions of non-abelian vortices,"
Journal of High Energy Physics 0802 (2008) 100.


受賞理由
1. Daisuke Ida, Kin-ya Oda, Seong Chan Park
"Rotating black holes at future colliders: Greybody factors for brane fields"
Physical Review D67 (2003) 064025 Erratum Physical Review D69 (2004) 049901.


素粒子標準模型に内包する問題であるゲージ階層性の問題の有力な解として余
剰次元を持つ模型が提唱され、盛んに研究されてきた。とりわけ、物理の基本ス
ケールがテラスケールにある場合には衝突型加速器実験でブラックホールの生成
が起こりうることが指摘され注目を集めた。しかしながら初期の研究においては、
極めて単純な仮定に基づいたブラックホールの生成が議論されていた。
本論文において尾田氏・Seong Chan Park氏らは、4次元ブレーン上での場の
方程式を解析することによりホーキング幅射のスペクトルを世界に先駆けて具体
的に求め、さらにブラックホールの生成・蒸発における角運動量の役割を議論し
た。特に、生成されたブラックホールは一般に大きな角運動量を持つこと、その
場合のホーキング幅射は大きな異方性を持つことを発見したことは、先行研究に
よる単純な描像に大きな変更をもたらし、その後のこの分野の研究に大きな影響
を与えた。
本論文の共著者である井田大輔氏は素粒子論グループの会員でないため授賞対
象にならないが、選考委員会は井田氏の貢献を受賞者と同様に高く評価すること
を付記する。


2. Yoshiaki Koma and Miho Koma
"Spin-dependent potentials from lattice QCD",
Nuclear Physics B769 (2007) 79.


クォーコニウムの物理は、近年、様々な実験による新しいデータの蓄積と理論
の進展をもとに、理論の予言と実験値の比較が盛んに行なわれ急速に発展してい
る。
本論文はクォーコニウムのfine-splittingの予言に必要なスピンに依存したポ
テンシャルをクェンチ近似による格子QCD計算を用いて決定したものである。
この研究は有効理論「Potential-NRQCD」に基づき理論的に不定性なく定義さ
れたポテンシャルを著者らが開発した独自の計算手法(スペクトル表示)を用いて
クォーコニウムの記述に重要な0.5fm近傍の領域を含めて高い精度で決定した点
で特に優れている。
この結果は、クォーコニウムの物理の分野で最も信頼度の高い結果として高く
評価されており、今後クォーコニウムにおける非摂動効果の寄与の定量的評価な
ど、クォーコニウムの物理の解明に役立つと期待される。


3. Robert Auzzi, Minoru Eto and Walter Vinci,
"Static interactions of non-abelian vortices,"
Journal of High Energy Physics 0802 (2008) 100.


nonabelian ゲージ理論における vortex 解の研究は、これまで超対称性のあ
BPS ソリトンに関するものが主であり、超対称性がない場合でもソリトン
単体の場合に限られていた。
本論文は、超対称性がない場合の nonabelian vortex 間に働く力を初めて一
般的に解析したものである。とくに、vortex が持つ内部自由度の相対的向きに
依った力がvortex 間に働くことを数値的手法も用いながら初めて示し、vortex
が十分離れた場合の相互作用の振る舞いについて系統的な分類を行った。
また、この研究結果は、現在では、高密度 QCD 中の渦紐や宇宙弦の解析にお
いて重要な役割を果たし始めている。このように、衛藤氏らによるこの野心的な
研究は、より現実的な模型におけるソリトンの解析を大きく進めるきっかけとなっ
たものであり、高く評価される。


総評
今回は素粒子論委員会の様々な応募促進策のおかげで応募件数は大幅に増え1
6件に達しました。選考委員会では、各応募作品に対し「抜きんでいる、賞に推
したい」、「優れている、賞に値する」、「良い、賞の可能性はある」、「今一
歩、今回は見送るべき」、「賞にふさわしくない」の5段階評価を行い、その後
全員で意見交換を行って受賞候補者を絞り込みました。応募論文は何れも力作ぞ
ろいで、ほとんどの作品が「良い、賞の可能性はある」以上の評価を受けました。
受賞件数を上限の3件以内におさめるのに大変苦労しましたが、選考委員会とし
ては受賞理由に述べた観点から今回の受賞作を選びました。今回惜しくも選に漏
れた方々もその力量は高く認められていますので、更に優れた研究を行い、再度
応募して頂く事を期待しています。



2010年度(第5回)素粒子メダル奨励賞

というのを頂戴できる事になりました。(当該プレプリント論文Erratum

追記あり)

受賞理由

 素粒子標準模型に内包する問題であるゲージ階層性の問題の有力な解として余
剰次元を持つ模型が提唱され、盛んに研究されてきた。とりわけ、物理の基本ス
ケールがテラスケールにある場合には衝突型加速器実験でブラックホールの生成
が起こりうることが指摘され注目を集めた。しかしながら初期の研究においては、
極めて単純な仮定に基づいたブラックホールの生成が議論されていた。
 本論文において尾田氏らは、4次元ブレーン上での場の方程式を解析すること
によりホーキング幅射のスペクトルを世界に先駆けて具体的に求め、さらにブラッ
クホールの生成・蒸発における角運動量の役割を議論した。特に、生成されたブ
ラックホールは一般に大きな角運動量を持つこと、その場合のホーキング幅射は
大きな異方性を持つことを発見したことは、先行研究による単純な描像に大きな
変更をもたらし、その後のこの分野の研究に大きな影響を与えた。本論文は、素
粒子論グループ非会員との共同研究であるが、尾田氏の果たした役割は高く評価
でき、受賞に値する。

 

総評
 今回は素粒子論委員会の様々な応募促進策のおかげで応募件数は大幅に増え1
6件に達しました。選考委員会では、各応募作品に対し「抜きんでいる、賞に推
したい」、「優れている、賞に値する」、「良い、賞の可能性はある」、「今一
歩、今回は見送るべき」、「賞にふさわしくない」の5段階評価を行い、その後
全員で意見交換を行って受賞候補者を絞り込みました。応募論文は何れも力作ぞ
ろいで、ほとんどの作品が「良い、賞の可能性はある」以上の評価を受けました。
受賞件数を上限の3件以内におさめるのに大変苦労しましたが、選考委員会とし
ては受賞理由に述べた観点から今回の受賞作を選びました。今回惜しくも選に漏
れた方々もその力量は高く認められていますので、更に優れた研究を行い、再度
応募して頂く事を期待しています。


これからも精進して、このさき受賞者としてこの賞の権威を高められるような研究成果を出していきたいです。


卑近な話ですが賞をいただけて素粒子論業界の外の人に対しても目に見える結果として残るのも大変ありがたいです。今のところの任期があと1年5ヶ月なのでなんとか次のジョブ・ハンティングに活かしたい。(だれか採ってくれw)