広さ

妹「こないだ子どもたちを科学館に連れて行ったときに聞いたんだけど、宇宙って太陽系ぐらいかと思ってたらその外にも広がってるんだね」
私「あたぼうよ。太陽系なんて小さい小さい。銀河って聞いたことない?」
妹「それって銀河系?」
私「それそれ。それは太陽系よりずっと大きい。ていうか隣の星でも行くのに光の速さで4年とかかかる」
妹「光の速さで一年って地球を七周するというやつ」
私「地球を一周するのは0.1秒ぐらい」
妹「それは遠いね」
私「遠い」
妹「星が集まると銀河になる」
私「そうそう」
妹「銀河が集まると?」
私「銀河団
妹「銀河団が集まると?」
私「超銀河団
妹「超銀河団が集まると?」
私「それでだいたい今見えてる宇宙の全部ぐらい」

はじまり

妹「宇宙の始まりってどうなってるの」
私「宇宙背景輻射っていう宇宙のいたるところからくる光の揺らぎの観測から、インフレーションというのがあってめっちゃ広がったということが確実」
妹「たとえばこの指の先くらいの大きさがどのくらいまで広がったの?」
私(う、計算したことない)「そらもうめっちゃくちゃでかいよ。ちょっとまって」
グーグル様に聞く。
おや、e-folding 60 で1億光年ですか。意外とちっちゃい。
私「見えてる宇宙の1/100ぐらい。つまり1mの領域がだいたい今見えてる宇宙の大きさぐらいまで広がったと」*1
妹「なんで広がったの?」
私「真空のエネルギー」
妹「その真空っていうのは真空管の真空と一緒?」
私「違う。ここでいう真空ってのは粒子がなんにもないってこと。粒子はなんにもないんだけど場が充満している」
妹「場?電気とかの?」
私「電気的には中性だけどだいたいそんなようなもん。電気の場は電場とか磁場。今考えてるのはよく分からない場。よくわからないけどインフレーションを引き起こした奴なのでインフラトンと名前がついてる。ちなみにこの世の素粒子のすべては場です」*2
妹「場ってのは波みたいなもの?」
私「そうそう」
妹「なんにもないけど場だけがあってそのエネルギーで広がったと」
私「そうそう」
妹「そのエネルギーは何が与えてるの?」
私「分からない。場がこうなってるときにはエネルギーはこうなるんじゃないか?と手で式を書いてるだけ。その結果を観測と比べて最終的にあってたら正しい事になるけどまだそこまで行ってない」
(正しいことになったらこんどはそれが何からどう与えられるか?というステップに行くわけですな)
妹「なんで1メートルのサイズで場がおなじになるの?」
私「それも分からない」*3
妹「インフレーションの前はどうなってるの?」
私「それも分からない」
妹「じゃともかく今わかってる宇宙の始まりは、1メートルの大きさの、場のものすごいエネルギー、ということでいい?」
私「いい」
妹「それがめっちゃ短い時間で広がったと」
私「そのとおり。0.000000………00000001秒とかそういう」

*1:長さ1メートルはインフレーションの途中であって、もっとちっさいところから本当は始まってるわけだけど、観測的に証拠付けられているのはだいたい e-folding 60 ぐらいまでですよね。

*2:このへんや後の途中でヒッグス場のはなしや余剰次元のはなしも大分したが本稿は宇宙のはなしなのでパス。

*3:Slow-roll inflation は地平線問題を解決しない、というのが私の立場。

ビッグバン

妹「ビッグバンっていうのは?」
私「いまビッグバンっていうとだいたいビッグバン元素合成のことで、宇宙が冷えて100億度ぐらいになったときに、宇宙の軽い元素、水素とかヘリウムが作られたことをいう。あるいはその前の、あらゆる物質がどろどろに溶けた熱いスープ、プラズマっていうんだけど、それができたときをいう。」*1
妹「それはインフレーションの前?」
私「あと。インフレーションのあと、真空のエネルギーがドロドロのスープ、プラズマに化けて、それが冷えたときにビッグバン元素合成を引き起こす」
妹「プラズマっていうのはこの身のまわりの物質もプラズマ?」
私「(あープラズマっていうのは状態を表す言葉だから使わん方がよかったな)いや、この物質がバラバラに壊れてどろどろになったものをプラズマという。」*2
妹「インフレーションの時は熱くないの?」
私「めっちゃ冷えてる。どんどん引き伸ばされて薄まるから」
妹「インフレーションで引き伸ばされる摩擦でスープができた、と思っていい?」
私「うーん、だめ。スープが出来るのはインフレーションの最後の最後」
妹「場のエネルギーがどうやってプラズマになるの?」
私「よく分かってない。インフレーションが終わってからビッグバン元素合成までの間はまだ分かってなくて色んな説がある。だいたいスープの温度が1京(1000兆)度より下は今の理論で書けると思ってて、それが冷えてって100億度ぐらいになって元素合成が起こるところはよく分かってる。インフレーションが終わってからスープが出来てそれが1京度より冷えるとこまでは色んな説がある」
妹「じゃあ分かってる宇宙の始まりをまとめると、1メートルぐらいにひろがった場のエネルギーがあって、それがめっちゃ短い時間でめっちゃ広がって、そのあとよくわからないけどビッグバンのスープになって、元素になったと」
私「うん大体そう」

*1:「100億度って熱いじゃん、それじゃ手元の水槽でビッグバンを起こすとかはできないんだね」というので、今でも鉛と鉛を光の速さ近くまで加速してぶつけて10兆度ぐらいまで出せる、という話をしたりした。

*2:「ちなみにビッグバンで作られるのは軽い元素だけで、僕らのまわりのこの鉄とかそういう元素はだいたいぜんぶ星の最後の爆発、超新星爆発で作られたもの。我々は超新星爆発の残骸でできている」(ドヤー)と言ったがこれはイマイチ反応が薄かったw