ワルシャワの燕たち(五木寛之)

去年の冬ポーランドへいく事が決まった後アマゾンで検索して買った本達の一つ。昨夜ちょっと読み出して、今朝の通勤で読み終わる。奥さん評「ポーランドは只の舞台背景で日本人による日本人のおはなし」というのを聞いて敬遠してたんだが、読んでみたら団塊臭は鼻につくもののなかなかにウェルメイドなエンタテイメントであった。
ポーランド青年のセリフ

「反論じゃないんですが――」
 と、彼は目を伏せていった。
ポーランドのことをアジアに対するヨーロッパのガード・バンパーだと言った人がいます。歴史的にもたしかにそうでした。わたしたちはくり返しくり返し他国に支配され、自由と独立の希望もまたくり返しくり返し挫折してきたのです。コンラッドという人は大国イギリスにあって、外国人の視点でかつてのポーランドを見ています。でもわたしたちの希望は決して安易なオプティミズムではありません。その反対なんですよ。先生が指摘なさったように、むしろ悲観的な楽天主義者なんです。でなければ、もうとっくに希望や、夢を見る情熱は失われてしまっているでしょう。事実を見てください。戦後のワルシャワは完全な廃墟だったじゃありませんか。安易な楽天主義なんかでそれをここまで再建できるわけがないでしょう。丸山先生はロバート・キャパの〈無限大の希望〉という一枚の写真をごらんになったことがありますか?」
「あるとも」
 丸山氏はうなずいた。
「一九四五年、戦争の終わったあとにキャパがワルシャワで撮影した有名な傑作だろう?見渡すかぎりの瓦礫のなかを母と子が歩いてゆく情景だった。あれはすごい写真だね」
「そうです。あの完全な廃墟のなかからわたしたちはワルシャワを再建したのです。灰のなかにダイヤモンドを見出すとは、そういうことなんじゃないでしょうか。私たちはそれを夢見るだけでなく、実現しました。そして民主化も自分たちの手で闘いとったのです。コンラッドはそこを見誤ってると思いますね。私たちが抱いているのは、安易な希望なんかじゃない。必死の希望なんです」

というあたりに路面電車のなかで思わず涙ぐみそうになったのは内緒だ。
というか一番衝撃を受けたのは、この本の舞台となった1990年当時なんと2万円=120万ズウォティの交換レートという点であった。スゲエよ! 今1ズウォティ33円と思って暮らしてるのよ!! 1990年に1万円ぽっちズウォティに替えてずっと持ってたらなんと今2000万円!! 先見の明がある資本家が1000万円だけズウォティに替えて持ってたら今200億円!!!
初めて資本主義のダイナミズムに触れた思いだ。よく言われる「これからは海外投資の時代だ」たとえばココというのはこういう事なのね。金のためにセコセコ賃金労働するぐらいなら資本家になれ、と。
前から「海外投資するならポーランドおすすめっすよ!人類史上初の社会主義体制から資本主義体制への移行を無血でなしとげた民度の高さ、戦後の瓦礫の山から壁のヒビ一本に到るまで旧市街を再建したド根性、科学技術への尊敬の念、ドイツから移ってみて明らかに感じる人々のハングリーさ、まだまだ成長余力が高いよ!」と書こうとは思ってたんだがすっかり色褪せた気分だ。*1 次に一攫千金を狙うならどこかね。やっぱインド?
(追記 11/15:今朝聞いたらズウォティはいっぺん一万分の一のデノミがあったそうな。だから、1990年の一万円は、今の2000円。そうそううまい話はありませんな。しかしですな、ここ数年ズウォティは対ユーロ、対円ともに値を上げてるのです。ってことはですよ、ま・さ・に、今、混乱期を抜けたポーランド経済は羽ばたこうと欲している、ポーランド投資超お買い得ってことじゃん!そこら中でビルもばんばん建設中だしな。ポーランドの安定してそうな会社の株ちょっと買って10年ぐらい持っとく、というのをけっこう真剣に考えている。)


*1:いやでももはやこういう爆発的な成長はもう無理だろうけど、これからもポーランドの未来には期待できそうだしポーランド低リスク株ファンドとかあったら買いたいんだけど。