ポスドク問題

送信1(2005年7月8日 19:03):

森山和道

はじめまして。ドイツでポスドクをしている尾田欣也と申します。ネットサイエンス・インタビュー・メールをいつも楽しみに読ませて頂いておりました。


日記のページにて
http://moriyama.com/diary/2005/diary.htm#diary.05.07.08

▼たとえば、高学歴の人間ほど、社会は厚遇し続ける仕組みになってるんですね。もちろん、税金でね。そのことは「フリータ問題としての博士の就職問題」などを見れば分かります。ポスドク1万人に対して給料として配るべく計上された予算が479億円なのに対し、これだけ社会問題となっているフリーターに対して就職支援代として計上された予算は596億円。ちなみにいまフリーターはおよそ420万人とされてます。この数には35歳以上無職の人は含まれていません。厚生労働省の定義から外れるからです。で、なおかつポスドク余剰問題といって、新聞で取り上げられたりもしているわけです。これが現代社会の現実です。

と書かれていましたが、これはあまりに乱暴な議論ではないでしょうか。ここに書かれていることをそのまま受けとっても、479億円というのは研究(労働)の対価であり、これと「フリーターに対して就職支援代として計上された予算」を比べるのは、例えば「35歳未満の国家公務員の給料の総額」と比べるのと同じぐらい意味がないのではないでしょうか。最低でも、リンク先の「ポストドクター等一万人支援計画」が、研究支援・振興のためではなく、博士の就職問題解消のための予算だという根拠を示さなければ、無意味な議論ではありませんか。(なんの解決にもならない単なる問題の先送りのために479億円も出すほど役人も馬鹿ではないでしょう。)
また、「ポスドク余剰問題」の文脈で仰るのであれば「フリーターの就職支援代として計上された予算596億円」と比べるべきは、「ポスドクの給料」ではなく、「ポスドクからの就職支援代として計上された予算」(もしそういうものがあるのであれば)ではないでしょうか。そうでなければただの詭弁ではありませんか。

以上違和感を感じたことをメールさせていただきました。
これからもサイエンスの記事を楽しみにしておりますので頑張ってください。
尾田欣也

  • -

Kin-ya Oda
Physikalisches Institut der Universitaet Bonn
Nussallee 12, Bonn 53115, Germany
+49(228)73-3719, +49(228)73-9336 (FAX)

  • -

返信1(2005年7月8日 19:09)十数分後返事が来る:

森山です。

(なんの解決にもならない単なる問題の先送りのために479億円も出すほど役人も馬鹿ではないでしょう。)

僕には、これは問題の先送りをやっているようにしか見えてません。

「役人もバカではないでしょう」と仰いますが、
では、具体的にはどんな対策があるのでしょうか?
それこそ単なる憶測ではないのですか?

そもそも、市場が存在しないのにポスドクを大量に作り出したことに
「余剰」の原因があることは明らかだと僕には思えます。

その「余剰」が、どんどん先送りされている、
しかも我々の税金を無駄遣いして。

そんなふうにしか僕には見えませんね。

なぜ我々が大量生産されたポスドクの給料を負担しないといけないのか、
その理由もさっぱり分かりませんし、
投資だと考えても、あまりに無駄に思えます。

_________________________________________________________________________
森 山 和 道 ------- http://www.moriyama.com/

▼ 無料 週刊科学メルマガ【ポピュラー・サイエンス・ノード】
  登録は → http://moriyama.com/popular_science_node/
▼研究者インタビューをメールで!【サイエンス・メール】
  創刊!! 登録は → http://moriyama.com/sciencemail/
_________________________________________________________________________

送信2(2005年7月8日 19:20)僕も脊髄反射w(以下署名欄略):

森山さん

もう一度書きます。

479億円というのは研究(労働)の対価であり、これと「フリーターに対して就職支援代として計上された予算」を比べるのは、例えば「35歳未満の国家公務員の給料の総額」と比べるのと同じぐらい意味がないのではないでしょうか。最低でも、リンク先の「ポストドクター等一万人支援計画」が、研究支援・振興のためではなく、博士の就職問題解消のための予算だという根拠を示さなければ、無意味な議論ではありませんか。

挙証責任は立論側にあります。

尾田欣也

#個人的には、役人側の立場としては、「博士の就職問題解消」なんて考えてもおらず、単に、何十年も金を払わなければならない教授で雇うより安価で若くて元気のいいのに研究させて科学技術の振興ができれば、そのさき生き残れなかったポスドクがどうなろうが知ったこっちゃない、って事ではないかと思ってますが。

返信2(2005年7月8日 19:32)十数分後また返事が:

森山です。

479億円というのは研究(労働)の対価であり、これと「フリーターに対して就職支援代として計上された予算」を比べるのは、例えば「35歳未満の国家公務員の給料の総額」と比べるのと同じぐらい意味がないのではないでしょうか。最低でも、リンク先の「ポストドクター等一万人支援計画」が、研究支援・振興のためではなく、博士の就職問題解消のための予算だという根拠を示さなければ、無意味な議論ではありませんか。

増えたポスドクの市場は、そもそも、存在してなかったわけです。
だから余りそうになった。
そこで、ポスドク支援計画ができて、「市場」が国によっていきなり作り出されたわけです。

いわば、フリーターを養うために、国が大量にコンビニを作ったようなものでしょう。
あるいは、セブンイレブン助成金を出して、フリーターを雇わせたようなものでしょ?

尾田さんは、そうじゃない、それは研究支援・振興のためだと仰いますが
そもそも「ポストドクター等一万人支援計画」という名前なんですよ。
そりゃ、予算計上の理由には、研究支援・振興のためでございます、という理由も書かれてるでしょうね。
うまくいけばそうなることは、もちろん僕も否定しませんよ。

でもね、カネの使い方が間違ってるんじゃないですか、
少なくとも配分はおかしいよね、と僕は言ってるわけです。
それとも、フリーターの増大は、一般市民に無関係だとお考えですか?

さて、私の質問にも答えて頂けませんか?
なぜ我々が、ポスドクの給料を税金から負担しないといけないのでしょうか?

また、これが問題の先送りではないと仰る根拠はなんでしょうか?

送信3(2005年7月8日 20:24)おうちに帰る前に送る:

森山さん

どうも認識が食い違っているようですね。
現時点で既に実感として、僕の分野では、平均すればポスドクの方が教授よりも一年あたりの論文の本数×被引用数でずっと上です(数百人の教授・ポスドク定量的なデータは手元にはありませんが)。ポスドクは教授の半分以下の給料で馬車馬のように働き、しかも3年経てば自動的にクビを切れるわけですから、国にしてみればずいぶんお得なお買い物ですね。
他の分野は知りませんから、森山さんが「いや、全体としてはポスドクの研究の生産性は低い、こんなのは博士の就職対策だ」と具体的にデータを示して仰るのならばそれまでです。そうでなければ、無責任に搦手からポスドクの労働の質を非難しているだけです。
それから、いうまでもないことですが、「給料を税金から負担しないといけない」のはポスドクだけではありませんね :) 「なぜ我々が、公務員の給料を税金から負担しないといけないのでしょうか?」(科学研究に税金を使うことに意味がない、という主張をされるのであれば、もはや言うことはありません。)
最後に、「これが問題の先送りではない」と仰る場合の「問題」とはどの問題のことですか?博士・ポスドクの就職問題ですか?その問題についてはもちろん、先送りにして問題を大きくする事にしかなっていません。何の意味もありません。そもそもその問題への意識が国にあればこういうスキームにはならないでしょう。現状では、ポスドクの人生を搾取することで短期的な利益を国が得る、という構図ですね。

ポスドクが不当な受益者である、と非難するのであれば、ちゃんと根拠を示して下さい、と言っているのです。

尾田欣也

返信3(2005年7月9日 2:10):

森山です。

ポスドクが不当な受益者である、と非難するのであれば、ちゃんと根拠を示して下さい、と言っているのです。

つまり尾田さんは、ポスドクは馬車馬のように働いているのだから、
アプリオリに権利を受益できて当然だ、と思ってるんでしょうか?
それはなぜですか? 

「挙証責任は立論側にあります」と仰っていましたよね。
誰だって働いてますし、その労働は国を大なり小なり豊かにしてますよ。
ポスドクを新たに1万人分、国が生活を丸抱えするほどの意味はどこにあるのかと問うているんですよ。
改めて伺いますが、
これだけ国の財政が逼迫し、公務員の人数も削減されようとしているいま、
ポスドク1万人分の給料を国が丸出しする意味はどこにあるんでしょうか。

ポスドクの一人が、その受益をもらって当たり前、
質問している納税者に対する説明義務もないと感じていることを知ると、改めて疑問に感じます。
「お買い得」と仰いますが、それこそ根拠が必要でしょう。
内輪のサイテーションだけが根拠ですか?

繰り返しますが、
____

でもね、カネの使い方が間違ってるんじゃないですか、
少なくとも配分はおかしいよね、と僕は言ってるわけです。
それとも、フリーターの増大は、一般市民に無関係だとお考えですか?
____

と、僕は言ってるんです。

それから、いうまでもないことですが、「給料を税金から負担しないといけない」のはポスドクだけではありませんね :) 「なぜ我々が、公務員の給料を税金から負担しないといけないのでしょうか?」(科学研究に税金を使うことに意味がない、という主張をされるのであれば、もはや言うことはありません。)

そういうのは、尾田さんが最初のメールで使っていた言葉を借りれば、ただの詭弁というんですよ。
あるいは議論のすり替えですね。

繰り返しますが、カネの配分がおかしいんじゃないの、と僕は言ってるんです。
そもそもの日記の文脈も、そうなっているでしょ?

送信4(2005年7月10日 13:28)中一日あけて最後に送ったメール:

森山さん

何か誤解されているようですが、私は日本国から給料を貰っているわけではありません。ドイツからです。
日本についていうと、科学技術振興は小淵内閣あたりから強調されて政府が重点的に力を入れています。この方針自体に賛成なのですか反対なのですか?前者ならば振興策として、ポスドクを増やしても有効ではない、という議論は可能です。プロのサイエンスライターとしてぜひ素晴らしい実のある対案を示してください。後者ならば野党に投票するなり自分で政党を作るなりして下さい。日本は民主主義国という事になってますので。
国策で出された予算に応募して労働の対価を受けとることを「権利を受益」と脳内認定して連呼するだけの非難では、馬鹿にしか見えません。
なお、配分を云々されるのであれば「科学技術振興」なんていうゴミみたいな所を削っても何も変わりません。御存知ないようでしたら以下のページが参考になるかと思います。
http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

おわかり頂けなかったようですが、国がAという目標を立てて金を使ったときに、「いや本当の目的はBに違いない、しかしこの金の使い方ではBにとってまるで意味がない、だから無駄だ」という議論の仕方は頭が悪すぎませんか?と言っているのです。「それって目的がBじゃないってだけじゃない?」
堂々と、「このお金の使い方ではAの目的を達成できない」という議論をするのがまともな大人というものではないですか?
念のため書いておきますがA=科学技術振興、B=博士ポスドクの就職問題です。
森山さんはこの“ロジック”に則ってBの目的に金が使われているとポスドクを非難したわけですが(「日記の文脈」がそうなってるので指摘したのです、もう一度読み返してみてください)、最後までその非難の根拠は示していただけませんでしたね。すれ違いになってしまい残念です。

尾田欣也

返信4(2005年7月10日 15:24):

森山です。

やれやれ、最後は人をバカ扱いですか。
自分に見えているのがごく狭い世界でしかないことを認められないとは、
バカはどちらなんでしょう。
なお、

念のため書いておきますがA=科学技術振興、B=博士ポスドクの就職問題です。
森山さんはこの“ロジック”に則ってBの目的に金が使われているとポスドクを非難したわけですが

これ、全然違いますよ。
国語能力低すぎです。
ドイツにいるせいで他人の書いた日本語を読解できなくなっているとしたら残念ですね。

(;´Д`)
あんまり「議論」というのをしたことがない人なのだろうか。「ある意見が馬鹿に見える」というのと「その意見をいった人が馬鹿である」というのが、大学でてサイエンスライターやってる人に切り分けられないものなんですかね。馬鹿な意見を一度も言ったことのない超人?
僕のメールそんなに分かりにくいかね。