この絵でどうだ!

局所性の問題についてちょっとずつ

 前回の例えはイマイチだった気もするので絵を描いてみた。以下実関数のフーリエ余弦変換で例える(わざわざ複素数までいかんでも本質は一緒だ)。

まず上の図の黒くて太い線で書かれた釣鐘を考える。町田さんのいう

波動関数は図18aに示したような形をしており、すべての波長の成分を重ね合わせたものである。それはいわば、位置の測定の仕方と波長とは無関係にしたもの、あらゆる波長成分を測定するようにしたものに対応している。

図18aにあたるのが黒くて太い線で書かれた釣鐘です。フーリエ先生に従ってこの釣鐘を無限個の周波数成分に分解できます(本当は周波数ではなく波数と言うべきだが日本語的に波長と紛らわしいので以下こう呼ぶ・気になる人は脳内で波数に読み替えてください)。そっからいくつか適当な周波数を取って表示したのが赤から紫へかけての波です。赤→紫の虹の色順に周波数が大きくなり波長(横軸方向)が短くなります(今「波長」ってのがだいたい「周波数の逆数」ね、2πとか無視で)。で「周波数」がゆくゆくは「運動量」になります。
 この釣鐘は、周波数が小さい(赤い)成分をよりたくさん含んでて(その成分の縦軸方向の振幅が大きくて)、周波数が大きな(紫の)成分はちょっとしか含んでない(振幅が小さい)ことも見て取れます。つまり量子力学でいえば、周波数が小さい成分がメイン=だいたい静止してるような状態である、と。

そして、波長を1つの数値に限定すると、その波は空間全体に、宇宙のすみずみまで一様に広がってしまう。

と町田先生がいうとおり、これらの色付きの線は周波数を完全に確定した波たちなので空間(横軸)全体に広がってて無限に振動してるのが見て取れます(この図だと分かりにくいですが赤や黄色の線もそうです)。

 で、実際に測定するときには、完全に一つの波長だけを特定するのは不可能ですから、ある周波数の巾をもった「窓」で見ることになります。

しかし、位置の測定の仕方はいろいろ選ぶことができる。
たとえば、測定する波長をある範囲に制限すると、粒子の位置、つまり粒子の広がりが大きくなる。
1個のミクロの粒子は、すべての波長でまとめてみれば図18aのように局在していても、ある波長幅だけで見ればその広がりはずっと大きくなる。

というのを見てみましょう。周波数0から上の図の色の周波数までを積分する、すなわち、上の図の色より小さな周波数でだけ測定するような「窓」で見ると、それぞれ次のように見えます。

確かに、でかい周波数(短い波長・紫色)まで含んだ、周波数の不確定性が大きな窓で見るとちゃんと局在していて、小さな周波数(長い波長・赤色)までしか含んでいない、周波数の不確定性の小さな窓で見ると空間的にべったり広がっていますね。

そして測定の仕方そのものはどれも同等の資格をもち、どれが“本物”ということはないから、粒子の“広がり”も当然ながらどれも本物ということはない。それこそ測定の仕方によっては、粒子の広がりは無限小の1点から無限大、すなわちこの宇宙全体にまで広がり得るのである!
非常に狭い幅の波長だけを選んで観測することにすれば、1個の光子の空間的な広がりはいくらでも大きくすることができる。

 じゃあやっぱり宇宙全体に広がってる状態が観測できるんじゃん!
 
 いやいやそうは問屋が卸しません。

ただし、波長の幅を狭くすればそれだけ光の強度が弱くなるから、その点では観測の困難が増すことになるだろう。

窓の巾が小さくなればなるほど(紫→赤にいけばいくほど)、振幅は小さくなって測定が困難になっていきます。赤い窓で見たら振幅はほとんど至る所ゼロですね。
量子力学というのは実にうまいこと辻褄があうようにできているのです。