内田樹さんは

基本的に敵だと思ってるが*1、これに関しては禿同*2:「小学生に英語を必修させる必要があるのか?」。


ブクマ()を見てるとどうも伝わってないようだが彼の真意はむしろこっち「『リベラシオン』を読んで、外国語教育について発作的に考える」によく顕われている、と私は思う(以下抜粋なので是非原文も読むべし):

外国語教育の基本はまず「読むこと」であるというのは私の年来の持論である。


「受信しうるメッセージの質と量」に限って言えば、「聴く能力」と「読む能力」では受信できるメッセージの桁が違う。どう考えても、「まず」リテラシーの涵養から始めるというのがコミュニケーションのコスト・パフォーマンスを考えたらいちばん合理的な選択のはずである。しかし、現在の外国語教育は「まず」ネイティヴの発音を聴き取ることから始めることを当然としている。なぜ、このような不合理な教育戦略が採択されているのか。


「読む」とき、読み手はテクストに対してかなりの自由裁量権を発揮できる。読み手と書き手は、「対等者」として向き合っている。しかし、外国語を「聴く」ときには、聴き手にはそれほどの自由は許されない。理解できない単語は理解できないまま宙に消える。辞書を引く暇なんか与えられない。「すみませんが、もう一度」と要請することは、しばしば聴き手の知的劣位を告白していることにひとしい。つまり、「読ませる教育」と「聴かせる教育」では、圧倒的に「聴く」教育の方が「送信者」の知的威信が高いのである。私はネイティヴの綴り字の間違いや文法上のミスを指摘することができるが、彼らの発音の間違いを矯正することはできない。というより、そのような権利は学習者には与えられていない。オーラル・コミュニケーションを外国語教育の中心にする限り、ネイティヴ・スピーカーは絶対不敗の知的威信を構造的に確保されている。だから、植民地主義的発想で外国語教育を行うすべての旧帝国主義国家は、まずオーラル・コミュニケーションの習熟を植民地人民に求めるのである。それはリーディングから先に教えると、できのよい植民地の秀才が短期間に「宗主国民」よりも知的に上位に立つ可能性があるからである。


日本について言えば、英語をオーラル中心に学ばせるということは政治的には「英語話者の知的威信が構造的に担保される」体制を堅持するということである。私は英語であれフランス語であれ、「学習者の知的水準がつねに劣位に固着されているコミュニケーション」にはどうも気が進まない。それは私の性分のなせるわざだから、拡大適用することは控えるけれど、「英語話者の知的威信が構造的に担保され、ノン・ネイティヴがつねに劣等感を覚えるような教育システム」を採用していることの政治的な意味について、ときどき考えることは必要だろうと思う。

私も同感。


英語なんて「アメリカ様みたいな発音ができないと恥ずかしい」とかいう植民地根性を捨てて堂々と日本風英語を話す意識を見につければ誰でも喋れるようになるよ。欧州人、に限らずインド人をはじめとする旧植民地人だって、基本的にこのツールとしての意識で自国風に英語を話している。


大学生の夏休み、俺が産まれて初めていった外国が(トランジットでシンガポールに一泊→)イングランドスコットランドなんだが、そんときはイングランドに4週間スコットランドに3週間の語学留学プログラム(誰でも応募できる奴*3)であった。んでスコットランドで衝撃的だったのが英語の先生に「おまえBBCみたいな英語を話したいと思うのか?俺は自分のアクセントに誇りを持ってる、あんな風に話したいとは思わない」といわれた事(笑)。 語学留学、最初にアメリカじゃなくて英国に行くのは割とおすすめかも。他の欧州諸国から来た白人がヘッタクソでデタラメな英語を堂々と話してるのと一緒に練習するとへんなコンプレックスとか生じにくい。


使えるようになるには、内田さんのいう

「すみませんが、もう一度」と要請することは、しばしば聴き手の知的劣位を告白していることにひとしい

という植民地根性をいかに払底し、いかに「国際コミュニケーションのツールとしてこの俺様に分かるように平明に話せない貴様が腐っているのだ」とネイティヴに対して思えるようになるか*4、いかに堂々と “I don't understand.” “What do you mean?” “(Could you) say it again?” が言えようになるかが分かれ道である(もちろんその際自分が悪いとはいささかも思ってはならない)。


だいたい英米じゃ乞食でも英語喋ってんだから。


*1:彼の逃げ切り世代からの恥知らずかつ無責任極まりない若者叩きは、怒りを煽る事により注目をあつめるという戦略に基づいたアクセス乞食売文屋としての所業だと思うが、そういう釣り師は昔耽溺していた2ちゃんねるでもうお腹いっぱい。

*2:もはや死語になってるかも知れない&非ネトヲタのために書いとくが、激しく同意、の略です。

*3:たしか赤坂見附の山王なんちゃらビルかなんかにある半公的みたいなのだったような。検索してみたが出てこない。

*4:例えばアメリカンの話す英語なんて国際コミュニケーションのツールとしての英語(発音記号をそのまま丁寧に発音したような英語)からすると、とてつもなく訛っている腐れ英語である。あんなもん早口で話したのを分かる義務は一切ない。(つっても使ってるうちに分かるようになるけど。)